| あなたとホテルに来た理由 | |
| 2001.11.20(Tue)〜25(Sun) シアターサンモール |
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ぼくが『あなたとホテルに来た理由』をつくった理由 中野俊成 (公演パンフレットより) ▽ 至極当然なことを書くようですが、「苦しい」という感情は「思い通り」にいかない時に生じるものだと思っています▽単に自分の身に、ある負荷がかかっているから「苦しい」のではなく、その負荷を「思い通り」に処理できないからこそ「苦しい」と感じるのです▽たとえば、50kgの荷物を運ばされた場合、重い荷物を「運ぶこと」が苦しいのではなく、重い荷物を「思うように」運べないことが苦しいのです。重さは苦しさには直接関係ありません▽その仕組みを逆手にとって、「思い」を自由にコントロールすれば、「苦しい」感情を避けることは可能ですが、なかなかそうは出来ません。特にその「思い」が「恋愛感情」だとすれば、さらに困難を極めます▽恋愛を考える上でキーポイントになるのは、この「思い通り」ということではないかと思うのです▽「思い通り」にいっていれば、恋愛はこの上なく楽しく幸せで、そうでなければこの上なく苦しい▽この原理をさらに見つめると、そこに浮かび上がってくるのは「自分自身」だということに気づきます。「思い通り」にしたいと躍起になるのは他でもなく「自分自身」で、その「思い通り」の裏側には、必ず自分のほんとうの姿が投影されているからです▽5,6年前に『どうしようもないもの』という作品を書く際、テーマである“家族”について調べているうちに、“何故人を好きになるか”という問題にぶち当たりました。その時、自分なりに到達した結論は、簡単に言えば“自分のため”というものでした。更に言うならば、“傷ついた自分を守るため”です▽極端な例を挙げると、「ストックホルム症候群」がその顕著な例です▽知らない方のために簡単に説明すると、1973年にストックホルムの銀行を強盗が襲い、人質をとって立て籠もった事件が発生しました。この事件で世間を驚かせたのは、事件解決後に人質の1人であった女性が犯人と結婚してしまったことでした▽その不可解な結婚は心理学者達の興味を集め、彼女に起こった心理的変化を称して「ストックホルム症候群」と名付けられました▽いったい、彼女は何故、犯人と結婚してしまったのか。それはやはり、自分を守るためなのです▽被害者は、暴力と監禁状態から身の危険を感じます。当然、その「恐怖心」から開放されたいと願う彼女は、犯人の元から「逃げ出したい」と考えます。しかし、それが困難になってくると、今度は逆に犯人の元に「とどまろう」としてしまうのです。なぜなら、「逃げ出す」ことも「とどまる」ことも「恐怖心から開放される(自分の身を守る)」ことにおいては同等なことだからです▽また、監禁生活が長くなってくるにつれ、二人にとってその異常な状態は「日常」にすりかわっていき、やがて「連帯感」と「共依存」が生じてきます。そうして、お互いが相手から逃れられなくなってしまうのです▽このような極端な例は稀としても最近はこれに類した男女の関係が増えていると感じます▽ドメスティックバイオレンスや過剰な束縛、ストーカー行為。これらはすべて“依存の恋愛”とも言うべきもので、“恋愛”の理想のカタチにしてみればかなり歪んだものだと思うのです▽今回、構想以前の段階で決めたことは、恋愛をいかに“滑稽”に描くか、ということでした▽恋しさも愛しさも苦しみも悲しみもすべてひっくるめて“滑稽”にしたい。そう出来る健康的な男女を描こう、と▽現実の恋愛は“滑稽”にするにはあまりにもイビツで残酷なものが増えつつあるからです▽たとえそれが苦しい恋愛だったとしても、のちのち思い出して苦笑いできるような、そんな恋愛が理想なのではないかと思うのです▽せっかくの人生、一時期でも空白を作るのはやっぱり損ですから▽本日はご来場有難うございます。今回は久々にオムニバス形式にしてみました。しかも、ハラホロ初のオール二人芝居でいつもとはちょっと趣が異なる作品が出来ました。洗濯の合間に短編小説を読むような気分で楽しんで貰えたら幸いです。ま、洗濯の合間という例えにはあまり意味はないんですけど。 |
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