| ハラホロシャングリラ番外公演 | |
| ただそれだけのこと | |
| 1995.3.1(Wed)〜5(Sun) シアターサンモール |
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エレベーターに乗って階数ボタンを押すが、ボタンにランプが灯らない。別に壊れている訳ではなく、そのエレベーター自体が古いのだ。過去に何度かそのエレベーターを利用している僕はそのことを知っていた。実際、ボタンを押すとすぐにドアは閉まり、ゆっくりとエレベーターは上昇し始める。しかし、僕は再びボタンを押してしまうのだ。
インターホンのボタンを押すが、そのスピーカーからチャイムの音の返りがない。壊れているのではない。旧式なのだ。幾度かそのマンションを訪れたことがある僕はそのことを知っている。しかし、僕は何度もボタンを押してしまうのだ。結果、インターホンから聞こえてきた応答の声はいつものように不機嫌そうだった。
タクシーに乗って行き先を告げるが、返事がない。無愛想な運転手なのだ。別に僕の声が小さかった訳でも滑舌が悪かった訳でもない。そのことは、タクシーがすぐに走り始めたことでも明らかだった。しかし、僕はもう一度、今度は大きめな声で行き先を告げてしまうのだ。運転手はうるさそうに「判ってます」と僕に返してくれる。 結果が確認できない時、人は不安になる。 エレベーターのボタンが点灯すれば、それを押したことが確認できてもう一度ボタンを押さずに済む。チャイムにしたって、タクシーにしたって同じだ。確認できれば落ち着けるのだ。 ウォークマンをしながら会話をする時、僕たちが大声になってしまうのは、相手の声が聞こえないからではない。自分の発した声が自分の耳で聞き取れないからなのだ。 ウォークマンを取り外すか、そのまま大声を出し続けるか、その選択を迫られるとき、気づくと僕たちは30歳になっている。 中野俊成(パンフレットより) |
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